■心のケアのレベル■

子どもが児童保護局に保護されると、まず心理面での評価が行われ、Level of Care(ケアのレベル)が決められます。LOCとは子どもが必要としているケアの質のことで、basic(基礎)、moderate(中度)、specialized(*特殊*)、Intense(高度)に分かれています。最近LOCの改定がありこの4段階になったのですが、それまではLOC1〜6の6段階でした。

*Specializedを「特殊」と訳しましたが、実際は中度と高度の真ん中に位置します。 LOCは順番になっていて、けっしてspecializedがどれよりも「特別」にケアを必要としているという意味ではありません。*


ケアの質
(改定後)
ケアの質
(改定前)
ケアの内容
Basic
(基礎)
LOC 1,2
(1) 制限が最も少なく、普通の家庭環境内で育てられる。
(2) また、普通の家庭環境内で、それぞれの子どもに合った規則や指導を与えながら育てられる。
Moderate
(中度)
LOC 3,4
(1) 施設やセラピューティック・フォスター・ホーム(後に説明します)において、規律、規則に基づき育てられる。 また、必要に応じて、カウンセリングやセラピーを受ける必要がある。
(2) また、施設や特別な知識・技術を持ったセラピューティック・フォスター・ホームにおいて、規則、規律に基づきながら育てられる。 また、定期的なセラピーやカウンセリングなど、個別の治療の必要がある。
Specialized
(特殊)
LOC 4,5
(1) 施設や特別な知識・技術を持ったセラピューティック・フォスター・ホームにおいて、規則、規律に基づきながら育てられる。 また、定期的なセラピーやカウンセリングなど、個別の治療も行われる必要がある。
(2) 治療施設に入る必要がある。重度の問題を抱えており、厳しい監視下で集中的なセラピーやカウンセリングを受ける必要がある。
Intense
(高度)
LOC 6
重度の問題を抱えており、常に監督を必要とし、治療・ケアを受ける必要がある。 認可を受けた治療施設で厳しい監視の下、包括的な治療サービスを受ける必要がある。

<参照> Youth For TomorrowのHPより

里親制度に入る必要のある子どもは2種類に分けることができます。1つはbasic child(基礎的な子ども)で、上記の基礎レベルに位置します。もう1つはtherapeutic child(心理治療を要する子ども)と呼ばれ、上記の中度〜高度のように、特別なケアやサービスを必要とする子どもを指します。

修士課程最初のインターン先の里親斡旋エージェンシーは、特にセラピューティック・チャイルドと判断されたケースが児童保護局から送られてきました。セラピューティック・チャイルドは、想像をはるかに超える問題を抱えており、特別なケアを必要とします。例えばネグレクト(育児怠慢、放棄)のケースだと、子どもはトイレ訓練を受けていないだけでなく、身の回りのケア(シャワーを浴びる、顔を洗う、歯を磨くなど)、さらには食生活(たとえば、決まった時間にご飯を食べない。お菓子ばかり与えられていたので、普通のご飯が食べられないなど)の部分で、習慣を身に着けていないことがほとんどです。私が驚いたケースは、15歳でトイレに行くことを知らず、フォスターで1からトイレとは何か、用を足したくなったらトイレに行かなければならないことなどを教えなければならなかったことです。また、虐待を受けた子どもは、心理的、また身体的に重度な問題を抱えていることが少なくありません。

そのため、セラピューティック・チャイルドを受け入れる里親家庭も、ある程度の知識や技術を持っていなければなりません。里親家庭にもbasic foster care(基礎・里親ケア)とtherapeutic foster care(セラピューティック・里親ケア)があります。里親として子どもを受け入れるためには、児童保護局が発行するテキサス州の資格が必要です。この資格を取るためには長くて細かな段階を踏まなくてはならないのです。インターン先のエージェンシーは、里親家庭を育成するトレーニングも行っていて、州と提携していることから、さまざまなプロセスを無事修了した家庭に資格を与える役割も担っていました。

ちなみに余談ですが・・・このエージェンシーが扱うほとんどのケースはセラピューティック・チャイルドでした。しかし、虐待がもとで保護者から兄弟姉妹まとめて引き離す場合、兄弟姉妹を同じ里親家庭に入れたほうが良いと判断された場合は、たとえある子どもが低度(basicレベル)のケアを必要としていても、兄弟にセラピューティック・チャイルドがいた場合は、エージェンシーが介入することがありました。