2003年2月行われた全米ソーシャル・ワーク教育協議会(Council
on Social Worl Education)主催の学会で、「異文化に対応する能力(cultural
competence)についての議論が交わされ、ソーシャル・ワークの実践における「異文化に対応する能力」に関する基準が設けられました。これは非常に興味深いことだと思います。なぜなら、多様化する社会で活躍するソーシャル・ワーカーにとって、「異文化に対応する能力」を身につけることは必至であることを示しているからです。
以下は全米ソーシャル・ワーカー協会(National
Association of Social Workers)が隔月に発行している「NASW
News」というニューズレターからの抜粋です。
全米ソーシャル・ワーク教育協議会が、「異文化に対応する能力」の基準を承認
全米ソーシャル・ワーク協議会の理事会は、2月26日にアトランタで行われた年次集会で、ソーシャル・ワークの実践における「全米ソーシャル・ワーカー協会・異文化に対応する能力の基準」を全員一致で承認した。
集会に参加した全米ソーシャル・ワーカー協会理事長エリザベス・クラーク氏は、「ソーシャル・ワーカー、全米ソーシャル・ワーク教育協議会、そしてソーシャル・ワーク教育の中心的指針となる基準を設けることは、ソーシャル・ワークの価値基準をさらに高めることになる。」と発言。
クラーク氏によると、全米ソーシャル・ワーク教育協議会の理事会メンバーはすでにこの基準を授業で教えているとのこと。「ソーシャル・ワークの学生にとって、「異文化に対応する能力」は教育的にも非常に大切な要素である」とクラーク氏は言う。
「異文化に対応する能力の基準」は、ケース・ウェスタン大学のクレア・シモンズ氏が委員長を務める全米ソーシャル・ワーカー協会、全米多人種・民族委員会が最初に提案したものである。今回の全米ソーシャル・ワーク教育協議会の承認は、「この基準を浸透させるのに役立つだろう」とクラーク氏は話す。「異文化に対応する能力の基準」が全米ソーシャル・ワーカー協会理事長によって2001年6月に承認されたことにより、ソーシャル・ワークが実践においての「異文化に対応する能力」に関する基準を設けた最初の専門分野となった。
「異文化に対応する能力の基準」は、倫理や価値観、自己認識や異文化理解、サービスの提供、エンパワーメントや擁護、多様な労働力、専門教育、多言語、そして異文化を超えたリーダーシップについて述べている。
(原文は以下の通り)
Cultural Competence Standards Endorsed by
Education Council
(NASW News Volume 48, Number 4, April 2003,
p1)
The Board of Directors of the Council on
Social Work Education (CSWE) unanimously
endorsed NASW's Standards for Cultural Competency
in Social Work Practice on Feb. 26 during
the CSWE Annual Program Meeting inAtlanta.
Having the standards endorsed by both NASW,
which primarily represents practitioners,
and CSWE, the educational arm of the profession,
enhances the standards' value, said NASW
Executive Director Elizabeth J. Clark, who
attended the meeting.
Several CSWE board members said they were
using the standards in the classroom, Clark
reported. "We know they are an important
educational component for all social work
students," she said.
NASW's National Committee on Racial and Ethnic
Diversity (NCORED), chaired by Clara Simmons
of Case Western University, initially requested
endorsement of the standards by CSWE. In
replying the request to CSWE's board, Clark
said that a CSWE endorsement "would
help make [the standards'] availability known."
The standards were approved by the NASW Boards
of Directors in June 2001, making social
work one of the first professions to compile
standards of cultural competence specific
to its practice.
The standards address ethics and values,
self-awareness, cross-cultural knowledge,
service delivery, empowerment and advocacy,
a diverse work force, professional education,
language diversity and cross-cultural leadership.
(基準に関しては、www.socialworkers.org/practice/standards/cultural_competence.aspより見ることが出来ます。)
多文化であるアメリカ社会において、文化の違いや言語の違いを無視することは現実を無視することと等しいのです。まして人々の生活・人生に直に関わるソーシャル・ワーカーは、異文化に対する知識や寛容さを求められていますし、異文化に対応する能力を備えている必要があります。「異文化に対応する能力」とメンタル・ヘルスの専門分野に関する文献は、たくさん見つけることができます。