■専門家間の境界線--教授の見解■

「諸専門家間の境界線」について、院のコブ博士に聞くことができました。

以下は、その教授からいただいたメールを管理人がそのまま訳したものです。なお、HPに掲載することに関しては、事前に許可を得ています。

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身体的健康面から見ると、「諸専門家間の境界線」はハッキリとしている。つまり、医学の分野で学位を持っている人だけが医療行為に携わることができる。「ドクター」と呼ばれるのは、それらの人々が医学の分野における専門家であり、専門的役割を果たしているからだ。しかし彼らは、身体的健康“だけ”に関心がある。精神科医は医師であり、医学部で「メンタルヘルスに影響を及ぼしうる薬と体の関係」を学んだ人たちである。在籍した医学部にもよるだろうが、精神科医は「セラピー(心理療法)の技術」を掻い摘んだ程度、もしくは全く習っていない場合がほとんどだ。近年アメリカの精神科医の多くは、メンタルヘルスの問題的症状を抑える薬を処方することだけに力を注ぐようになってきている。管理医療(managed health care:雇用主の医療費負担を抑制する目的で、ある患者集団の医療をある医師集団に請け負わせる健康管理方式)や保険会社は、1人の患者との一時間の面会あたり100ドルから150ドル(=1、2万円くらい)請求しているし、薬の相談に来た患者に対して面会ごとに75ドルから200ドル(8000円から2万円強)を請求しているのが現状だ。症状を抑える薬の処方が主な役割なので、精神科医は一時間に3人、4人、5人、6人・・・患者を診察することが可能だ。財政的な報酬も計り知れないし、薬の管理が必要でやってくる患者に対するサービスにしてもそうだ。ほとんどの精神科医は、尋ねてくる患者にメンタルヘルスの専門家からセラピー(心理療法)を受けるよう強く勧めたり、時として義務付けたりしている。

現在アメリカでは、心理学の教育を受けた(臨床)心理学者、認可された大学・院を卒業したソーシャル・ワーカー、教育学部や結婚・家族カウンセリング学部などを卒業した専門カウンセラーが、メンタルヘルスの専門家としてサービスを提供している。多くの(臨床)心理学者は、クライエントの精神状態・機能の測定・鑑定に力を注いでいるが、中には心理療法をする者もいる。一方、ソーシャル・ワーカーは、アメリカ社会で活躍するメンタルヘルス専門家の大多数を占めるようになってきている。これは、精神科医、心理学者、専門カウンセラーの数をすべて足しても、その数をしのぐ勢いである。管理医療会社の中には(例えばIBMなど)、ライセンスを持ったソーシャル・ワーカーによる心理療法を義務付けているところもある。

よって簡単に言えば、一番決め手となる「境界線」は、ソーシャル・ワーカー、心理学者、精神科医・・・そういった法的肩書きを決めている「州のライセンス」ということになる。州によっては、専門カウンセラーのライセンスを定めていないところもある。テキサス州の保険産業は、州政府がコントロールしている。メンタルヘルスのサービス(つまり心理療法など臨床面のサービス)を提供する際に、保険会社や管理医療会社と提携して保険請求するソーシャル・ワーカーは、上級レベルの臨床ソーシャル・ワーカー(Licensed Clinical Social Worker:LCSW)であることが、法律で決められているのである。

(SWN Blog: 2/16/05掲載)