■アメリカ大学院出願手続き■

留学先大学を決めるにあたって、大学の知名度や設備などが重要視されがちですが、それよりも、「自分に合った場所」を探すことが先決ではないかと私は考えています。異文化で生活する以上、誰だって最初は文化の違いなどにぶちあたることがあるでしょう。しかし、それは時間と共に解消されていくものです。どれだけうまくそして早く適応していけるかによって留学生活が左右されます。カルチャー・ショックやホーム・シックが長引けば、学業にも差し支えます。ソーシャル・ワークという学問の影響を受けてきた私にとって、環境と人は切っても切り離せないものであり、「自分に合った場所」の重要性をますます感じています。どこの大学に行くかではなく、どこにいてもどれだけ自分らしく自分のしたい勉強に専念できるか・・・それが留学先大学選びの鍵となるのではないかと思います。

ソーシャル・ワークの修士課程(MSW)プログラム選びにおいても同様です。アメリカでソーシャル・ワーカーの資格を得るには、CSWEに認可された大学・大学院を卒業しなければなりません。CSWEとはCouncil on Social Work Educationの略で、アメリカにおけるソーシャル・ワーク教育の改善と向上を目的に設立された団体です。ソーシャル・ワーク教育を統制する役割を担っており、CSWEが定める教育レベルに達しない大学・大学院は認可が下りないのです。CSWEの認可までのプロセスは厳しく、そのことから、CSWEから認可されたソーシャル・ワーク・プログラムならどこでも、一定の基準を満たした良い教育が受けられると言えます。もちろん大学・大学院によって校風もプログラムの特色もあります。それを調べた上で、最終的な決断はやはり「自分に合った場所」で自分のしたい勉強のできる学校を選ぶことに尽きるのではないでしょうか。

International Student(留学生)の願書提出締め切りは、アメリカ人学生のものよりも早いのが普通です。ビザや移民関係の諸手続きが伴うためでしょう。こちらの大学(そしてアメリカ文化そのもの)が、「First Come, First Serve(早い者勝ち)」の傾向が強く、早く願書を提出した者から審査を始めてもらえることが多いようです。願書提出締め切り前であっても、定員数を越えると願書の受付をやめてしまう大学もあるという話を聞いたことがありますので、留学すると決めたなら手続きはテキパキと進めるのが賢明でしょう。

こちらは、日本のように一度に全ての書類を提出する必要はなく、用意ができたものから順々に提出していくことができます。送付した書類がちゃんと届いたか、さらにどの書類が必要かなどの情報は随時インターネットでチェックできるようになっています。今では、オンラインで願書を提出させる学校も増えてきています。

以下は私自身がソーシャル・ワークの大学院へ出願した際の必要書類です。どの大学院においても提出書類は似通っていることと思います。書類には、大学の「院入学事務所(Graduate School Admission)」に送る物と、学部の願書受付係り(School of Social Work Admission)に直接送る物とがありました。(G印が大学に提出書類、S印が学部に提出書類です。)

(1) 願書 (G)
(2) 一般教養科目のHuman Biologyに関するクラスの履修チェック (S)
(3) (在籍した全ての大学の)成績証明書 (G)
(4) (教授、雇用主などからの)推薦状3通 (S)
(5) 銀行の残高証明・財政能力証明書 (G)
(6) エッセイ (S) (その大学を選んだ理由、ボランティアなどの経験、ソーシャル・ワークを勉強したい理由、ソーシャル・ワーカーとしての将来の計画、現代の社会福祉が直面する問題点などをまとめて書く。4〜5ページ程度。)
(7) *GREスコア (G) (Graduate Record Examination:一般大学院入学適正試験と呼ばれ、アメリカの多くの大学院がこのスコアの提出を求めている。)
(8) (留学生の場合)TOEFLのスコア (G) (Test of English as a Foreign Language:米国留学のための英語学力検定テスト。)

(*) GREは、General TestとSubject Testの2つに分けられ、前者ではVerbal Ability(言語力=英語力)とQualitative Ability(数学力)、Analytical Ability(分析力)が測られます。後者は、出願者の専門分野に関する知識を問うもので、生物学、経済学、心理学など16専門分野があります。Social Work/WelfareのSubject Testはないので、ソーシャル・ワークの志願者はGeneral Testのみの受験となります。

GREやTOEFLが免除される場合もありますので、出願予定の大学を調べてみると良いでしょう。たとえば、大学院が以下のような基準を定めている場合です。
● GPA(Grade Point Average: アメリカの大学の学業平均値。最高4.0で、A=4、B=3、C=2、D=1、F=0で換算される)が3.0以上あれば、GREを免除する。
● アメリカの大学を卒業した、もしくは卒業予定のInternational Studentに限って、TOEFLを免除する。

私が一番悩み、時間を取られたのはやはりエッセイでした。アメリカの院進学では、「GPA」と「推薦状の質」、そして「エッセイ」が合否の大きな決め手となるようです。多方面から評価・審理されるということは素晴らしいことと思いますが、その分常日頃の努力と「勉強したい!」という明確な意思が、試されているような気がします。